皆様こんにちは。
岡山県倉敷市にて着付け塾を主宰しております古谷野貢(コヤノミツグ)です。
全国で衣裳方として各流派日本舞踊会を中心に活動する傍ら、現代の衣裳(振袖、婚礼衣裳、訪問着など)の着付師としても活動しております。
また、今年からは「きつけ塾こやの」を主宰し、現場を飛び回りながら磨いた実践的な技術を、余す事なくお伝えしております。
キモノ入門の際、普段着(カジュアル)を除いて、
「まず一枚キモノを作るなら附下がおすすめですよ!」
とキモノ専門店や詳しい方からアドバイスを受けることが多い『附下(つけさげ)』と呼ばれるキモノについて、書いてみたいと思います。
『附下はセミフォーマル(準礼装)のキモノ』
冒頭に “普段着を除いて” と書きましたが、附下(つけさげ)は準礼装のキモノで、フォーマルのシーンで着用するキモノです
*素材や文様のつき方でカジュアルに分類される附下もあります
キモノを広げてみると、基本的にフォーマルからカジュアルまで一見、見た目は同じですが、素材、文様、紋の数、製作方法によって「キモノの格」が決まります。
附下の仕様については後に書きたいと思いますが、フォーマルシーンに着用するキモノの種類をあげると以下の通りです。
フォーマル(正装):黒留袖、色留袖、黒紋服
セミフォーマル(準礼装):訪問着、附下、色無地
2023.06.19
【女性の着物】格式と種類〜フォーマル・セミフォーマル・カジュアル〜
皆様こんにちは。着付師のコヤノミツグです。当ページへのご訪問ありがとうございます 全国で衣裳方として各流派日本舞踊会を中心に活動する...
附下の着用シーンとは?
皆様の生活、もっと言えば人生の中のどんな場面で附下は活躍するのでしょうか。思いつくまま具体的に書き出してみます。
- 記念日やお祝い事の行事や会食
- 歌舞伎や演劇、コンサートの鑑賞
- 初詣
- パーティや催しの受付
- 司会業
- 節目のご挨拶周り
- お宮参り、七五三のお祝い
- 子供さんの入学、卒業式
- 結婚式、披露宴への列席
- 同窓会
まだまだ着用の機会はあります。
洋服で言えば、スーツやワンピース、ジャケットスタイルで出席の場には附下が適している、と言えば想像しやすいかと思います。附下は非常に着用シーンの幅が広いキモノです。
フォーマルにおける衣裳の考え方として、出席する場にいらっしゃるお相手、もしくはご一緒している方、場所に対して失礼のない衣裳であるか『お相手への配慮と想い』が大切かと思います。
そんな時のお気持ちとしては
- キモノ全体に文様のある訪問着では出過ぎる(目立ちすぎる)かもしれないので少し控えめな装いにしたい。
- 色無地よりは華やかさが欲しい。
といったシーンにはもってこいなのが “附下” なのです。
これが『まず一枚キモノを作るなら附下がおすすめですよ』と言われる理由です。
附下ってどんなキモノ?
キモノをお持ちの方に「これは訪問着?附下?どちらでしょうか」と尋ねられることがよくあります。
これは本当によくある質問ですが、附下の歴史を知ると訪問着との見分けはつきやすくなると思います。
今回は歴史、訪問着との見分け方をご紹介します。
“附下” は戦後に生まれたキモノの種類
実は附下というキモノは1940年以降に生み出された新しいキモノの種類です。その背景には当時の日本情勢が大きく関わっています。
当時の日本といえば、1941年に太平洋戦争が勃発しようとしている時です。
その前の年、1940年7月7日に国より『七・七禁令』という勅令が出されます。
内容としては、華美な装飾品や贅沢品の生産を禁ずるというものでした。
要するに、大正時代から昭和初めにかけて女性達を着飾った華やかな訪問着が作れなくなってしまったのです。
しかし、女性たちはお洒落を求めました。
そこで勅令で禁止されていなかった『型染め』の技術を応用して、華美にならぬよう控えた文様付けをして生み出されたキモノが “附下” だったのです。
戦後、昭和30年から突入した高度成長期、昭和40年代にかけて一気に普及していき現在に至ります。
“附下” という呼び名はも『訪問着の格付け下のキモノ』からきているとも言われています。
附下の定義は大きく3つ
次に附下の定義についてご説明します。
見分けるポイントは主に3つあります。ここでは文章だけでは分かりにくいので写真を参考に見比べてみてください。
①肩山、袖山を天として、裾に向かって文様が付け下げてある。
②衿から胸、胸から袖へと縫い目を跨いで繋がった文様がない、もしくは少ない。
③訪問着に比べて全体的に文様が少ない。
上下で比べてみると、附下のほうが圧倒的に文様の量が少ないことがお分かりいただけると思います。
附下
訪問着
以上の3つが附下と訪問着を見分けるポイントです。
キモノ選びは「お相手と場所」が重要
キモノを着用して出席する機会は様々です。
場所、場面、誰と、どんなお席なのか、シーンによって選ばなければいけないのがキモノです。
普段のカジュアルなキモノは、言ってしまえば何でもアリです。思いのままにお洒落を楽しむことができます。
しかし、フォーマルなシーンでは常に『お相手と場所』があり、衣裳選びは慎重にしたいものです。
例えば、とある会の招待状に『当日は平服にてお越しください』と記載があったとします。
『平服』の文字をみて何の衣裳を想像されますか?
会の内容が、
『学生時代の友人の結婚披露パーティを居酒屋で』とあれば訪問着ではかしこまりすぎるのでカジュアル寄りな衣裳が相応しいと思います。
かわって、『目上の方もいらっしゃる会合で、会場は一流ホテル』となれば選ぶ衣裳は当然変わります。
ここで重要なのは、やはり 『お相手と場所』をふまえた “平服” の選択をすること なのです。
言い換えれば、『お相手と場所によって平服は変わる』ということ。ここで選択を間違えると、大恥をかくことになりかねません。
その配慮ができてこそ、貴女の格が上がるというものです。周りの方は何も言うことはなくても、ちゃんと見ておられるかたがほとんどです。
この衣裳の選択においても “附下” というキモノは着用シーンの幅が広いため、非常に心強いキモノと言えます。
お気軽にご相談を
着付師として活動する中で、
「この機会に何を着たらいいか分からない」と衣裳選択の相談をいただくことが非常に多いです。
貴女のお立場とTPOをじっくりヒアリングさせていただき、適切なお話をさせていただいております。
また私は『創作きもの明和美』という店舗の運営もしております。
京都の職人方と共に本京友禅と呼ばれるこだわりのキモノを創作しております。
特に、ここに書いた附下には力を入れておりますので、他人と差をつけたい本格正統派をお求めの御方へは衣裳のご提案もいたします。
参考にHPをご覧ください。
宣伝になってしまいました、すみません!
もっとも大切なことは『出た先で貴女が恥をかかないこと』
そして目立つという意味ではなく、良い意味で『一目置かれること』
いつも口癖のように言っている事なのですが、お相手に与える印象に、衣裳の度合いはかなり大きいです。
衣裳の選定から着付けまで、精一杯努めさせていただきます。
コメント