皆様こんにちは。岡山県倉敷市を拠点に、着付師・衣裳方として全国で活動している古谷野貢(コヤノミツグ)です。
また、「きつけ塾こやの」を主宰し、現場で磨いた実践的な技術をお伝えしています。
2026年3月7日19時(現地時間) フランス、パリにて開催されたパリファッションウィーク(パリコレ)のランウェイに、日本にて1000年以上受け継がれてきた衣裳【十二単】が登場しました。
パリコレ史上初とのこと。 世界のファッション関係者がキラキラした目で食い入るように見入っている姿、日本の美が伝わった瞬間を肌で感じたあの日を昨日の事のように思い返しています。
「文化継承あわい」の結成
キモノ着付講師を20年以上続けてこられた、文化継承あわい代表・岸本浩加さんから電話を受けたのは、2024年1月のことでした。
「私の心の奥底に、十二単への想いがある……」
「十二単で何をするんですか?」と問うた私に、岸本さんはこう答えました。
「分からない。けど、やらなくちゃいけない確信がある。一緒にやりませんか」
私も20年キモノに携わってきましたが、それまで十二単に関わることはなく……。思いもよらないお誘いでした。
それでも、「はい、ぜひ」と何の迷いもなく、その場で返答しました。
思えば不思議な気がしますが、必然であったと納得している今日この頃です。
その後、現在のメンバー5名が集結し、『文化継承あわい』が結成されました。

メンバーは、代表を務める岸本浩加さんを含む「衣紋者」3名、お方様に化粧を施す「化粧師」1名、そして『あわい』の名付け親でもあり、海外への発信を支え、英語語通訳師でもある「助け方」1名の計5名です。
結成時から世界は意識していたものの、まだ何も決まっていなかった時から英語ができる方がメンバーにいたことも、今思えば不思議なご縁でした。
「はふりの十二単」の誕生

2024年6月夏至の日。
メンバーで京都の装束店へ伺い、色、文様決め、糸を染めていただく段階から十二単の製作が始まりました。
染め、織り、そして縫製と約半年をかけ、2025年1月に十二単が完成。
所縁ある神社にて完成奉告祭を行い、私たちの活動がスタートしました。
ひとつひとつ作り手の想いが込められた衣裳は『はふりの十二単』と名付けられました。
稽古と挑戦の連続

活動開始!といっても十二単の着装もままならない状態の私たち。
お稽古モデルさんを募り、稽古の日々が始まりました。 2025年の1年間で約50回、40名以上のモデルさんのご協力をいただき、ありがたいお稽古の時間を重ねることができました。
その間にも、まるで『はふりの十二単』が意志を持っているかのように、結婚式、神社奉納、イベント出演、と私たちが想像もしなかった着装の機会を数多くいただいています。
そんな中、2025年11月に『来年3月のパリコレのランウェイで十二単を着装してほしい』というお話をいただきパリ行きが決定。
活動をはじめてまだ1年余りの出来事でした。メンバー誰もが信じられないこのスピード感。
その頃からメンバー誰からともなく『はふりの十二単さん』と呼ぶようになったのはここだけの話。
次はどちらへ向かわれるのか、、誰も知る由もありません。
本番当日、パリにて
とある女性の「パリコレのランウェイを歩く!」という挑戦。
そのための衣裳として、はふりの十二単が選ばれました。
文化継承あわいとしても世界に挑戦させていただけた、このご縁に心より感謝しております。
ショー本番の会場は、パリ・ルーブル美術館の隣にあるホテル・ノルマンディでした。
控室では、世界のランウェイで活躍されているモデルさん達に囲まれながらの十二単着装です。
ショーの舞台裏だけあって騒々しい中でしたが、モデルさん達だけでなくヘア・メイクのスタイリストさん達も「日本のキモノ」に興味津々の様子でした。
その空気に励まされながら、集中してリハーサルへ向けた着装を進めていきました。
今回のショーのオーガナイザーは、国際的に活躍するファッションデザイナー・サミーナ・ムガール氏です。
3部構成のショーで、当初は1部冒頭で十二単が登場する予定でしたが、本番直前に「最後に出演してほしい」と急遽変更に。
突然の知らせに驚きながらも、日本語の通じない地で「日本の美」が言葉なくとも伝わったのだと実感し、メンバーで歓喜しました。
リハーサルではうまく合わなかったBGMとのタイミングも、本番では過去いちばんの出来栄えでした。

*ショーの趣旨があり、この度のヘアスタイルは大垂髪ではなく、洋髪になっております
あとで詳しくお聞きしたところ、リハーサルの様子を見ていたオーガナイザー側が「素晴らしいので最後に出てほしい」と判断されたそうです。
限られた時間の中での準備でしたが、携わってくださった皆様のお陰で、無事に本番を終えることができました。
活動を通して感じる「感謝」
「感謝」は、あわいの活動が始まってからのテーマです。
チームとしてであり、メンバー各々には各々の想いがあります。
私としてはいつも私の好き勝手を何も言わず応援してくれる家族へはもちろんですが、 これまで私に携わってくれた皆さんへの感謝。
そして私の職業であるキモノの根源、『お蚕さん』の命への感謝です。
絹という一本の糸から着物が生まれることを、改めて実感する日々です。
最近日々実感していることですが、毎日誰かに『ありがとう』と言い、『ありがとう』と言っていただける機会が増えたこと。 ありがとうの循環。 文化継承あわいの活動を通じて成長させていただけた、と実感している事です。
はふりの十二単を纏うとき

これまで約50名のお方様がはふりの十二単を纏われました。
着装の間、約40分ほど。無言の中淡々と着装の所作が繰り返されます。
お方様により感想は様々なのですが、着装前と後ではかなりの感情の変化を感じていらっしゃいます。
着装中に涙を流される方も。 あるお方様が『祈りの着装』とおっしゃいました。 自分と向き合う時間、まるで瞑想しているようだと。
文化継承あわいのこれから
はふりの十二単さんがどちらへ向かわれるのかは未知ではありますが、向かう先に明るく広がる道が続いている事は間違いなさそうです。
必要とされる方に届けたい。
日本にとどまらず、世界へ向けて発信していきます。
また、無限大の可能性をもつ小さな子どもたちにも、本物を見てもらいたい。
日本で1000年以上受け継がれてきた十二単の文化、色鮮やかな日本の美を、肌で感じ、触れて、豊かな感性を育んでいただきたいと思っています。
今後も挑戦を続けながら、時には失敗しながらも、ありのままの私たちの姿をお届けします。
その一環として、映像の撮影も進めています。様々な形でお届けできる日を、楽しみにしていただけましたら幸いです。
文化継承あわいをもっと知りたい方へ
活動の様子や最新情報は、公式サイト・Instagramでも発信しています。
よろしければあわせてご覧ください。

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